「えっ! もしかして今日のかぼちゃめちゃうまでは?!」
できたて熱々のかぼちゃプリンを一口すくい、おれは衝撃に体を震わせた。早速指南役のネロに食べてもらうと彼にとっても満足いく出来だったようで、おれと目を合わせて口角を上げる。
「いいんじゃないか。甘ったるくなりすぎてないし、舌触りも滑らかだ」
「裏ごしね! めちゃくちゃ頑張ったよ……!」
美味しくなあれって呟きながらひたすら裏ごしをしたことを伝えれば、彼は怨念こもってそうだなあと笑われてしまった。失敬な。愛情と執念である。
「でも一時はどうなるかと思ったけど、無事に使いきれそうでよかったね、カナリアも喜んでたよ」
任務のお礼として、その村の特産物であるかぼちゃをしこたまもらって帰ってきたのは記憶に新しい。硬い皮と格闘しなければならないのですね……とカナリアさんが途方に暮れていたが、料理の含蓄が非常に豊富なネロと、力仕事と胃袋という意味の男手は十分にある魔法使いたちの手にかかれば消費にそこまで時間はかからなかった。
「しばらくかぼちゃはいいって、ファウストには言われたけどな」
「あはは」
キッシュにスープに煮物にプリン。ほかにもたくさんかぼちゃ料理が振舞われたのでここ最近のみんなの口の中はずっとかぼちゃの味がしている。秋っぽくていいかなとは思うのだが、甘いものをずっと食べていればしょいものが欲しくなるように、かぼちゃばかりをずっと食べていれば他のものも食べたくなるものだ。
「まあでも……」
ネロが思い出したようにふっと笑う。
「普段料理しないようなやつらも連れてきて、指先を黄色にしてたのは面白かったな」
「オズが来たときのネロもけっこうおもしろかったけどね。……いたっ、ごめんって」
中央の魔法使いたちに連れられてきたオズにかぼちゃ料理を教える段があったのだが、ネロは魔王としてのオズを恐れているらしく最中に何度か「俺が教えなきゃダメなのか?」とぼやいていたのを知っている。そのことを指摘したのだが、無言で小突かれてしまった。お詫びの代わりにとすの入っていない一番きれいなプリンをもう一つ渡すけれど、じとっとした目を向けられる。うーん、誤魔化されてはくれなさそうだ。
2020/10/27
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