包装を解いている直隈の口元にチョコを持っていく。もご、すこしの間口の中で転がすと、彼の表情は綻んだ。
「いちごだ〜」
俺の手の中には、いくつもの味のチョコがアソート形式で入っている小箱がある。俺もミルクチョコをひとつつまんで、口の中でとろける甘さに頬を緩ませた。
市場ではチョコレートの祭典が行われていた。せっかくだからと二人で立ち寄って、目ぼしいものをいくつかピックアップして一緒に食べようという話になったのだ。
タイミングを見計らいつつもうひとつ彼に食べさせて、俺も同じようにまたひとつ食べる。おいしい。俺が選んだのはアソート形式の生チョコレートで、彼が選んだのは――。
「どれから食べたい?ワイン?ブランデー?」
「んー、あっさりめのがいいかも」
「清酒系がいいかなあ、はい」
彼が差し出したそれにぱくついた。ふわっと香るアルコール、チョコが溶けると同時にとろりと流れ出すそれは嚥下の度にほのかな熱を作り出す。彼が選んだのは、お酒入りのチョコレートだった。
おいしい、と呟いた俺をみて彼も一粒つまむ。漏れ出た笑い声を聞くに、彼の感想は俺と同じらしい。
「あ〜……へへ、いいね。お酒入り」
「うん! シャイロックのお店でも、ブランデーのおつまみにチョコが出てるのをみたことあるし……お酒とチョコってこんなに相性いいんだね」
「じゃあ次はブランデーいってみる?」
はい、と唇をつつくように差し出されたチョコを、口を開いて受け入れた。清酒と比べるとさすがに匂いも強く鼻に抜けるアルコールもより強烈に感じられる。けれど、
「……めっちゃおいし〜!」
「ふっふっふ」
ソファに深く背をあずけながら言うと、彼は愉快そうに肩を濡らした。焼酎のチョコを摘んだ彼は俺に続いてソファに沈み込みながら、ゆっくりとそして深く頷く。
「ナッツ入りだ……、あまりにもおいしすぎる……」
「ふふっ、ふふふ」
俺もさっきの直隈と同じように肩を揺らして、彼ににじり寄ってキスをした。一緒にお出かけできたこととか、今一緒に過ごせてることとか、美味しいものを一緒に食べられていることとか。いろんな要素が手伝って俺を高揚させている。彼の腕が俺の背中に回ったのもそうだ。チョコレートの味を追うと、彼の舌は濃厚なアルコールの味がした。
「ふふ、なに、もう酔っちゃった?」
「んー……そうかも」
「わはは」
「直隈も、酔っちゃったならちゅーしていいよ」
「んふふ、そう? ……酔ってないとダメ?」
揶揄うような、どういう答えが返ってくるか分かりきったような顔をして彼は首を傾げる。ダメじゃないよと言い終わる前に、俺の口は塞がれてしまった。
2023/02/08