最近、賢者様がそわそわしている。そわそわしているというか、何かを隠している。夜は大体交互に部屋の行き来をしていたのに最近はもっぱら俺の部屋だし、用事があって賢者様の部屋を訪ねるといつもは豪快に広がる扉も、最近は気のせいなんかじゃないレベルに控えめだ。といっても、何を隠しているかはもうほぼ見当がついていて、なぜなら俺も数か月前に──ラスティカの誕生日に、同じような行動をしたから。
集団生活を送る魔法舎では、年齢にかかわらず一か月ごとにその誕生月の人の誕生日を祝おうという話になっている。シノは最近まで正しい誕生日がわからなかったみたいだけど、ファウストが星を読んで知ることができたらしい。
それで、俺の誕生日も近くなってきたから、きっとその用意をしてくれてるんだと思う。なんだかうれしいような恥ずかしいような気分だ。ラスティカと度を始めてからは彼が毎年祝ってくれたけど、大勢に祝ってもらえるなんて初めてだし、それに、特別な人からのお祝いだ。どうやって待てばいいのかすらわからない。
「どうすればいいと思う!?」
だから、俺はヒースとルチルに助けを求めることにした。すると面食らったように二人は顔を見合わせて、それから微笑を浮かべた。
「どんなプレゼントか想像して、楽しみに待てばいいんじゃないかな」
「確かに、気恥ずかしいのもわかるけどね。俺も両親がなにか用意してるのに気が付いたときは聞いた方がいいのか気が付かないふりをしたらいいのかわからなくて戸惑ったな」
「やっぱり待つしかないのかな~!?」
きっと西の魔法使いらしいと形容する人が多いんだろうけど、俺は静かに待つことが苦手だ。じっとしているよりも一分一秒でも長く楽しいことをしていたい。誰かが俺のために楽しいことを用意してくれているならなおさらだ。
「……決めた! 俺の誕生日のあとはすぐに賢者様の誕生日もくるし、賢者様の誕生日プレゼントをどうしようか考えてくる!」
そう彼らに宣言すると、二人は「クロエらしいね」とうなずいてくれた。
賢者様が俺にどういうプレゼントを用意してくれているのかはわからないけど、俺だって、きっと賢者様を喜ばせるようなプレゼントを作ってみせる!
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