準備2 小瓶

「う~~~ん……」
「賢者様、見つかりましたか?」
 ここはとある雑貨店。クロエの誕生日に向けて、準備をすすめるために訪れたのだが。おれは目当てのものが見つからずに売り物棚の前で唸っていた。
 先に別の買い物を済ませてきたミチルが後ろから歩いてくる。しゃがみ込むおれをみてミチルは状況を察したらしい。一緒に売り場にしゃがみ込んでおれの話を聞こうとしてくれる。
「クロエさんへのプレゼント用のものを探しているんでしたよね」
「うん。小さいアクセサリーを入れるんだけどね。お菓子用の大きい箱か、ちょうどいいサイズの箱はイメージが違ったりして」
「なるほど……。ちなみにイメージと違うって、どう違うんですか?」
「シンプルなのがいいなぁって思ってたんだけど、派手めのしかないみたいなんだ」
 そう言って売り場を指す。置いてあるパッケージは刺激的な絵やカラフルな商品が並んでおり、どちらかというとギラついた印象だ。おれの用意しているものとはイメージが違ってしまう。
「シンプル……シンプルですか……」
 うーん、首を傾げてミチルが一生懸命に考えてくれている。気持ちはとてもありがたいのだが、店をぐるりと回ってみたがプレゼント用の小箱が置いてあるのはこの一角だけだった。また改めて別の店に行くよと伝えようとすると、あっとミチルは声を上げた。
「賢者様、こっちに来てください!」
 やや興奮した面持ちで立ち上がった彼はすたすたと歩いていく。慌てて追いかけると、さきほどはちらりと見て通り過ぎたガラス売り場だった。その中からミチルはある一角を指す。
「ガラス瓶……!」
「はい!」
 そこには大小さまざまなガラス瓶が置いてあった。ビーカーの様なタイプから水差しのような形をしたものまでバリエーションは多く、その中からさらに小さいタイプを探しだすと──あんなに悩んでいたのが嘘のように、ちょうどいい大きさの小瓶が見つかった。手に取ったものは通常の小瓶とは違いコルクに瓶を被せるタイプの、つまり、実用ではなく中に何かを入れてディスプレイとして使うための商品だということがわかる。
「ボク、薬草のことがあってよく瓶や試験管を扱うのでつい目に入ってしまうんです。これならシンプルですし……この前賢者様が見学に来てくれた時の授業、覚えてますか? とある薬品を二つ混ぜると、綺麗な色になるっていう。ガラスは透明なので、あのときの薬品みたいに、賢者様の用意したプレゼントが綺麗に見えていいかなって思ったんです」
「ミチル……!」
 ちょうどいい入れ物を見つけてくれただけでなく、そこまで考えていてくれてたなんて……。語彙の許す限りミチルをほめちぎると、彼は照れくさそうにえへへと笑っていた。
「クロエさんに喜んでもらえるといいですね」
「……うん。喜んでもらえると、いいな」